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女性のモチベーションが高まれば職場全体に好循環が生まれる!

中島啓子さん
Vol.2 2014年12月26日
中島 啓子(なかじま けいこ)さん CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、BCBファシリテータ、
日本NLP協会公認:セールスNLP プロフェッショナルトレーナー、
日本キャリア開発協会CDA(キャリアカウンセラー)

大手都市銀行で「相談窓口」業務などを担当。在職中は連続して「店頭渉外優秀賞」を獲得。また、所属支店で「手話窓口」を開設するなどの功績も。結婚後、夫の転勤に伴い、退職。出産後、子育て期を利用してFPの資格を取得する。夫の病気を機に仕事に復帰し、現在はシングルマザーとして、2人の娘を育てながら、金融機関を中心とした企業研修など講師として活躍。女性社員と同じ目線に立った、現場重視の研修に定評がある。

 「周囲に迷惑をかける」ことを心配するワーキングマザーが少なくない

対談の様子和泉 女性活躍を推進するには、リーダーシップやマネジメントスキルを身につけることはもちろんですが、同時にワークライフバランス、つまり仕事と家事や子育ての調和をどう保つかも大きな課題になってきます。

中島 その解決策のひとつとして、私が行う研修ではグループ・ディスカッションを大切にしています。同じような立場、状況にある人たちと話すことで、本音が語れ、自分たちの手で解決策やよりよい方向性を見いだすことにつながるからです。
女性向けの研修でグループ・ディスカッションをすると、「子どもの病気などで仕事を休んだり、遅刻や早退することもあり、職場の人たちに迷惑をかけている」「自分が働くことで子どもにも迷惑をかけている」という声が非常に多く聞かれます。仕事も子育ても一生懸命頑張っているにもかかわらず、「周囲のみんなに迷惑をかけている」と悩み、自分を否定する毎日が続く人が少なくない。しかも、多くの場合、それを誰にも相談できず、自分一人で抱え込んでいるのです。

和泉 私もつい先日、2人のお子さんの子育てをしながら職場復帰を考えている女性にコーチングを行う機会がありました。その方も「周囲に迷惑をかける」ことを心配していました。コーチングでは「それでも仕事をしたいのはなぜか」「その先には何があるのか」を問い続けていくのですが、最終的にはほとんどの人が、生きがいや喜び、充実感、幸せ、平和、愛など肯定的な感情にたどり着く。彼女の場合もそうでした。次に「仕事に復帰することで起こりうるネガティブなこと」をたずねたところ、「イライラしたときに子どもに当たってしまうかもしれない」と言うのです。そこで「お子さんの立場で、お母さんにどんな言葉をかけてあげたいか」と聞くと「お母さん頑張って」と答えました。彼女はハッとし、自分が勝手に「家族に責められている」と思い込んでいただけだと気づいたのです。それと同じで、職場でも周囲の人に「仕事を頑張りたいと思っているけれど、いまは子育てもあって迷惑をかけてしまうかもしれない。それがとても辛い」と正直な気持ちを伝えると、意外と応援する言葉が返ってくるのではないでしょうか。

中島 そうですよね。研修後のアンケートを見ると「グループ・ディスカッションで同じ思いを抱えている人と意見交換できて良かった」という声が多いんです。職場内で子育て中の女性が悩みや不安を共有できる機会を提供できれば、前向きな気持ちで働けるようになると思います。

和泉 女性管理職を増やすという数値目標ばかりにとらわれて、彼女たちをサポートするしくみを構築する努力をしなかったら、笛吹けど踊らず…になってしまうかもしれませんね。

女性社員のモチベーションを保つしくみがない

対談の様子中島 女性活躍を実現するには、経営陣や管理職の意識改革が不可欠だと痛感させられることも多いですね。女性テラーの場合、男性と違って数値目標などノルマを達成してもほとんどの場合昇給にはつながりません。インセンティブの制度が無いに等しいのです。他の部分でインセンティブを与え、モチベーションを高める工夫をしなければ働く意欲を失いかねません。

和泉 だからと言ってポジションを上げればいいかというと、それも違います。一般的に男性は地位が上がることを喜びますが、女性はそういう価値観を持っていない場合も多いからです。多少の管理職手当は付くかもしれませんが、それよりも責任が増えて負担が重くなること避けたいと考えている人が多いのが現実ですよね。
以前、ある銀行の研修で「仕事をするうえで大切にしていること」を書き出してもらったところ、「適当に手を抜くこと」という回答がありました。それもひとりではなく何人もです。私は、堂々と、それも勤務時間内の研修で書いてしまうことに驚きました。それで「何故そう考えるの?」とたずねたら、「適当に手を抜かないと心も身体も疲れてしまって長く仕事を続けられない」と言うのです。

中島 そういう声はよく聞きますね。だからと言ってサボりたいわけではないんです。仕事に対するモチベーションを保つ仕組みがないから、適当に手を抜いて楽をして、時間が来たらとっとと帰りたいと考えざるをえない。そういう風土自体を変えていかなければ、形だけの女性活躍、単に女性の管理職を増やす数合わせで終わりかねません。

「喜んでもらえること」が女性社員のモチベーション・アップにつながる

和泉 これもコーチングの話になりますが、人生で大事にしている価値基準を書き出し、その順位づけをしてもらうと、男性の場合の「仕事」が上位に来るケースがほとんどです。ところが、女性は「仕事」がまったく出てこないことも少なくない。その代わりに「世の中に貢献したい」「周囲の人を幸せにしたい」が上位に来ます。

中島 確かに、お客様や同僚から「ありがとう」「あなたのおかげて助かったよ」と言われると喜びを感じるという女性テラーは多いですね。自分の仕事が世の中に貢献し、周囲の人を幸せにしていると実感できるからでしょう。それが積み重なれば仕事に対してもっと前向きになり、仕事そのものを楽しいと感じられるようになるはずです。

和泉 人生で大切にしている価値基準と仕事とがリンクし、統合すれば、モチベーションは高まります。そこに彼女たち自身が気づくことはもちろん、管理職がそれを理解し、そう仕向けることも必要でしょう。たとえば、仕事をお願いする際に「この仕事は、これこれこういう理由で周囲の人たちのためになり、喜ばれる」と説明すれば「それなら頑張ってやろう」と考えます。説明する手間ヒマもかかるし、無駄なことのように思えるかもしれませんが、そのプロセスこそがモチベーションを高めるうえで非常に重要なのです。

対談の様子中島 私が女性テラー向けに行う研修では、グループごとに、その店舗を良くする工夫を考え、実行してもらっています。たとえば、カウンターに杖置きを設置するでもいいし、残業を減らすでも、販売数値を伸ばすでもいい。目標を決めて、それを達成させるために、具体的にどんな取り組みをしていくのかを自分たちで考え、自分たちの手で実施するのです。そして、それが好評だったり、営業成績を上げることにつながったら、管理職はその成長を認め、しっかり褒める。取り組みの過程でも管理職は「進捗はどうかな」と声をかけるなどして、「あなたを観ているよ」「気にかけているよ」というメッセージを伝えてもらうようにしています。

和泉 自分たちの努力が、営業成績が上がる、お客様に喜ばれる、管理職や周囲の人から認められ褒められることにつながれば、仕事そのものが楽しくなるでしょう。そうすると仕事に対する欲も生まれ、さらなるモチベーション・アップにつながりますね。

中島 いま金融機関で働く女性たちは本当に大変です。扱う金融商品が増え、コンプライアンスも厳しくなるなか、経済の知識も金融商品のリスクも、お客様とのコミュニケーションのスキルも学び、アップデートし続けなければならないからです。しかも、子育てや家事もこなさなければならない。彼女たちが前向きに楽しく、喜びを持って働ける環境を整えることは、女性活躍を推進するうえで非常に重要です。

和泉  職場で働く女性の意識が変われば、周囲の人たちの意識も変わり、職場全体に好循環が生まれるでしょう。その仕組みを作り、提供することこそ、私たちプラチナ・コンシェルジュがお手伝いすべきことだと考えています。

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