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組織、顧客、メンバー、活動のPDCAマネジメントで 現場を強くすれば 生産性も顧客満足度もアップする!【前編】

河村庸子さん
Vol.4 2016年12月16日
河村庸子(かわむら ようこ)さん 組織変革コンサルタント、株式会社コラボプラン代表
英国国立レスター大学 MBA、早稲田大学 理学士
米国NLP協会認定 チェンジエージェント/コーチ/トレーナーアソシエイト、
国際ジェネラティブ・チェンジ協会認定 コーチ

株式会社リクルート(2012年まで)にて、
・転職サイト「リクナビNEXT」の構築、インターネット旅行会社の立上、基幹システム構築や連結決算の仕組など、大型プロジェクトへの取り組み。
・事業企画、コーポレート企画、経営企画にて、事業戦略、業績管理、M&Aなど事業の基盤となるスキーム作りと実践。
・IBM社(米国NY勤務、グローバルワイヤレス事業)、中国人材マーケティング、フィリピン技術者派遣など、海外業務を経験。
・HR、人材斡旋、人材派遣、ブライダル、住宅、自動車、旅行、経理、IT等、24事業の幅広い業務に携わる。

働き方改革が求められる一方で、顧客満足度をアップさせなければ収益が上がらない、いまの時代。一見、二律背反に思える命題ですが、優秀なリーダーがいればそれほど難なく解決でき、しかも組織としてのパフォーマンスを向上させることも不可能ではありません。いったい、何をどうすればいいのでしょうか。

実際に多くの企業のコンサルティングを手掛け、弊社との提携で「マネジメント研修」も担当しているコラボプランの河村庸子さんと、プラチナ・コンシェルジュ会長の和泉昭子が対談しました。

「働き方改革」にはPDCAマネジメントが不可欠

和泉 いま世の中では「働き方改革」の実現に向けて、さまざまな議論や取り組みがなされています。その一方で銀行などの金融機関は、マイナス金利政策で利ざやが稼げないばかりか、ノルマ営業監視の強化が求められるなど、厳しい経営環境下にある。つまり、顧客満足度の向上と同時に、生産性の向上、そして業務の効率化が求められています。

対談の様子河村 顧客満足度を上げつつ、生産性を向上させることは、全企業にとっての命題と言えます。しかも、いまは企業戦略による差別化が難しい時代です。では、どうすればいいのか。答えは「現場を強くする」こと以外にありません。

和泉 河村さんのマネジメント研修では、「PDCA」マネジメントを見直すことで、営業力と生産性を向上させることを重視していますね。とはいえ、PDCAは、新人からマネジメントレベルまでどの段階の研修にも必ず登場する、社会人にとっての「いろはのい」です。なぜ、敢えてそれを強調するのでしょう?

河村 確かに、PDCAを実施していない会社はないでしょう。ですが、本当にうまく回っていない会社も多い。そこに課題があります。
そもそもPDCAとは、計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act)という4段階の活動を繰り返し行うことで、継続的にプロセスを改善する業務プロセスの管理手法です。これを組織のPDCAと顧客のPDCA、メンバー(営業マン)のPDCA、活動のPDCAの4段階に分け、各PDCAの狙いと役割、効果を考え、決めるところから始めることが重要です。
例えば、顧客のPDCAで顧客の優先順位を確認すると、そもそも、どの顧客を訪問すべきかが曖昧なことが多い。だから、行きたいところ、つまり訪問するとイスを勧められ、お茶が出て来て、話しのし易いところばかりに行く。楽をして目的が達成できるからです。しかも、多くの会社が営業マンの目標を「数字」でしか示さないため、それ以上のことはしない。目標に達しなかった場合に備えて、いざというときにスグに契約が取れる「へそくり」的な顧客を隠し持っていたりもします。

和泉 なるほど。でも、見方を変えれば「数字」という目標は達成できていませんか?

河村 はい。ですが、その結果が組織のPDCAと一致しているとは限りません。組織が成長するには、組織のPDCA(=戦略)をきちんと決め、優先順位をつけることが不可欠です。仮に、競合のシェアが高いエリアのある会社(支社)ならば、新規開拓を重要戦略とし、注力すべきでしょう。にもかかわらず、営業マンの目標が「数字」だったら、わざわざ苦労して新規開拓をしようとは思わない。

和泉 組織のPDCAと現場営業マンのPDCAがちぐはぐなんですね。

河村 大切なことは、組織の重要戦略が慣れていない新規開拓だったとしたら、「新規開拓戦略」1つに絞って、それを行動に接続させることです。ここでは詳しい説明は割愛しますが、例えば、重要戦略を6ヶ月間で実現するための「9ステップ」を作成し、全員で知恵を出し合いながら足並み揃えて活動します。

重要なのは、リーダーが行動とKPIと売上げをマネジメントすること

対談の様子和泉 どうやら「9つのステップ」を作成することにポイントがありそうです。

河村 そうです。リーダーが「新規開拓してこい」と言うだけでは、営業マンはどこへ行って何をすればいいかわかりません。いままで通り「行き易いところ」ばかり行きかねない。重要なことは、戦略とKPIと行動と売上(業績)を一貫してマネジメントすることです。

和泉 「KPI」のマネジメントとはどのようにするのですか?

河村 「KPI」は重要業績評価指標、つまりこれを達成すると目標をクリアできるプロセスにすると有効です。それは「訪問先の社長と名刺交換する」ことかもしれないし、「商談をする」ことかもしれません。何がKPIかは組織によって異なりますが、「結果が出る前のプロセスを数値で把握すること」が非常に重要です。例えば、仮に10社アプローチして、社長に会えるのが7社、商談できるのが5社、契約できるのが1社というのが、その組織の今現在の実力だったなら、ステップの各段階で「本当に10社アプローチしたか」、「7社で社長と会ったか」「5社と商談したか」をきちんとマネジメントしなければ、目標は達成できません。

和泉 ナレッジの抽出は誰がやるのですか?

河村 リーダーです。人事権もお金の決裁権も必要ありませんから、必ずしも管理職でなくても構いません。

和泉 そのリーダーには、何のために9つのステップを実行するのかをしっかりと理解し、しかも各営業マンの行動を把握して差違を見いだし、現場のナレッジを抽出する実力が求められる…。責任重大ですね。

河村 そうです。現場を強くするキーマンは、リーダー、つまり中間管理職です。

和泉 ますます現場リーダーのマネジメント研修が重要な時代になったと言えそうですね。

効率化にはメンバー一人ひとりの実力アップが欠かせない

和泉 長時間労働の是正も今日の社会的な課題です。これもPDCAの見直しで解決できるものでしょうか?

対談の様子河村 もちろんです。例えば、営業マンの行動を測定すると、毎月、顧客を50件も訪問し、事務処理などに追われて残業続きなのに、パフォーマンスはほどほどというケースも少なくありません。多くの場合、「行き易い」顧客ばかりを訪問し、目標達成は期待できるものの苦手な顧客のところへは行っていないからです。それではいつになっても競合には勝てないでしょう。
競合に勝つためには「集中」、つまり勝つための戦略を実現する行動にフォーカスしてマネジメントするのかが重要です。例えば、50件のうち20件への訪問を止め、30件分の訪問で今までと同等の成果を上げる。と同時に新規開拓にも注力する。これを実現するには、営業マン自身が力をつけて成長するしかありません。

和泉 なるほど。「効率化」を進めるには、いかにメンバー一人ひとりの実力を高めて効率的に成長するかを考えるしかないんですね。
先ほどもお話したように、弊社の主要顧客である銀行は、マイナス金利で利ざやが稼げなくなったうえ、営業ノルマの監視強化で本当に苦しい状態です。加えて、かつては「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」と揶揄された銀行の法人営業ですが、今日では真の「顧客ファースト」が求められています。つまり、これからは財務や業績のいい会社だけにお金を融資するのではなく、顧客が抱える課題を見つけ、一緒に改善し、Win-Winの関係を築くことが求められる。と同時に、自社(支店)の効率化も進めなければならない。銀行経営は大きな転換期を迎えていると言えるでしょう。

河村 そう思います。いまのようにマーケットが複雑な時代、つまり戦略による差別化が難しい時代には、営業マンが「器用なこと」をしないといけません。「器用なこと」とするというのは、顧客が抱える課題を見つけて、問題点をしっかり把握し、相談に乗りながら一緒に課題を解決することです。それには顧客企業の状態はもちろん、その業界を取り巻く環境について理解することも必要でしょう。と同時に、傾聴力などのヒューマンスキルや課題解決力が欠かせません。

和泉 知識と傾聴力と課題解決力。まさにコンサルティング営業に不可欠な能力そのものですね。次回は、どうすれば、その能力が身につくのかを教えてください。

後編に続く・・・

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