前回の対談では、PDCAの見直しが重要な理由と、そのキーマンが誰なのかを紹介しました。第2回目は、具体的なPDCAの見直し方について、引き続きコラボプラン代表の河村庸子とプラチナ・コンシェルジュ会長の和泉が話し合います。
「現場のナレッジ」は、身近な些細な差違にある
和泉 企業戦略による差別化が難しいいまの時代は、現場力の強化が不可欠であり、それにはメンバー一人ひとりの知識と傾聴力と課題解決力が欠かせないことがわかりました。では、どうすればその能力を高めることができるのでしょうか。
河村 前回もお話しましたが、KPIを達成できた営業マンとできなかった営業マンの差違は、ほんの些細なことです。例えば「こんな声掛けをしたら扉を開けてくれた」「こう切り出したら話を聞いてくれた」など、ごく身近にある、しかも研修などでは教えてくれない、現場のナレッジが重要と言えます。その積み上げが、ヒューマンスキルや課題解決力にもつながります。
和泉 ごく身近にすぐマネのできるナレッジがあるものなのですね。ちょっと意外でした。とはいえ、リーダーが細かな差違を見い出す能力に長けていないと、ナレッジも見つけられないのではないでしょうか?
河村 そうです。行動量、例えば計画数、アポイント数、訪問数などを数値で把握し、メンバー間の違いを把握することからナレッジに接続させます。アポイント数が多いメンバーからそのコツを面談で聞き出すことも可能です。そうはいっても、リーダーがメンバー全員と一対一の面談をしていたら、いくら時間があっても足りません。だから、会議が大事になるのです。
和泉 その方法ならば効率的に現場のナレッジが見つけられそうですね。と同時に、その前段として、ここでは詳しくは触れませんが、組織レベルの課題がどこにあるかを把握し、対策にも明確な優先順位をつけることがとても重要になってきそうです。
日報を使ったマネジメントが行動を変える
和泉 「日報を使ったマネジメント」ですか?
河村 そうです。パフォーマンスが上がっていない会社では、社員の日報に「定期訪問」や「ご機嫌うかがい」という言葉が頻繁に出てきます。つまり、積極営業ゼロです。にもかかわらず、夜中まで働いていたりする。これでは効率が悪すぎます。
和泉 誰に○が多くて、誰に×が多いのかがすぐにわかれば、人事考課やマネジメントも効率的にできそうですね。
リーダーのコミュニケーション力で「やる気」が変わる
和泉 銀行でリテール営業を担当している人の研修をすると、「初対面の会話ができない」「何を話していいかわからない」などの理由で新規顧客を開拓できず、仲良くなった高齢者にばかり商品を売っている人も少なくありません。日報を活用したマネジメントをすることで、そのあたりの課題も解決できそうです。
河村 これまで社員の行動レベルのマネジメントをしていないのであれば、日報の管理を導入しただけでも、個々のメンバーに相当力がつきます。ただし、これを実践するには、メンバー全員に「やる気になってもらえる」ようなリーダーのコミュニケーション力も不可欠です。メンバー一人ひとりのモチベーションがどこにあるかも把握し、任せたほうがいい人には任せ、そうでない人は励ますといった対応も大切です。
和泉 メンバーそれぞれの得意分野を伸ばしつつ、組織としても強くなるには、どこをどう強化すればいいかを把握し、優先順位をつける。それが組織、顧客、メンバー、活動のPDCAを見直すということなんですね。
河村 繰り返しになりますが、企業戦略では差別化が難しい時代だからこそ、顧客満足度向上と生産性の向上を両立させるには、現場を強くするしかありません。
和泉 そのキーマンが中間管理職なんですね。私自身も一人の経営者として、とても勉強になりました。